世界的なエネルギー価格の高騰や、カーボンニュートラルへの関心の高まりを受け、家庭のエネルギーを電気に一本化する「オール電化」への注目が再燃しています。特に、高効率給湯器である「エコキュート」と、安全性と清掃性に優れた「IHクッキングヒーター」の同時設置は光熱費削減効果が大きく多くの家庭で検討されています。
しかし、いざ導入しようと思っても、「工事はどのような手順で進むのか」「工事には何日かかるのか」「どの業者に頼めば安心なのか」といった疑問や不安が尽きません。リフォームは決して安くない買い物であり、一度設置すれば10年以上使い続ける設備だからこそ、失敗は許されません。
この記事では、エコキュートとIHを同時に導入する際の具体的な工事の流れから、悪質な業者や技術不足の業者を避け、信頼できるパートナーを見つけるための選定基準まで、プロの視点で徹底的に解説します。
1. なぜ「今」がオール電化への切り替え時なのか

具体的な流れの説明に入る前に、なぜ今、多くの人がガスと電気の併用からオール電化への切り替えを急いでいるのか、その背景にある事情を整理します。
エネルギー価格の変動と家計防衛
電気代もガス代も上昇傾向にありますが、その中でも「基本料金(固定費)」の削減効果が見直されています。ガスと電気を併用している限り、使用量に関わらず両方の基本料金が発生します。オール電化にすることでガスの基本料金をゼロにし、一本化することは、将来的なエネルギー価格の変動に対する最も確実な「家計防衛策」となります。
住宅設備の「インフレ」と納期
近年、原材料費の高騰や物流コストの上昇により、住宅設備機器の価格改定(値上げ)が頻繁に行われています。「もう少し安くなってから」と待っていると、かえって機器代金が上がってしまうインフレの時代に突入しています。 また、半導体不足の影響は緩和されつつありますが、人気機種などは依然として納期がかかる場合があります。給湯器が完全に壊れてからでは、在庫のある機種しか選べず、足元を見られた価格で契約せざるを得ないリスクがあります。余裕のある「今」のうちに、計画的に導入することが、結果として最もコストパフォーマンスを高める方法なのです。
2. エコキュート&IH同時設置:検討から工事完了までの全ステップ

実際に工事を依頼する場合、どのようなスケジュール感で動けばよいのでしょうか。問い合わせから引き渡しまで、標準的なフローを時系列で解説します。
ステップ1:問い合わせと現地調査(所要時間:30分〜1時間程度)
まずは専門業者への問い合わせから始まりますが、最も重要なのが「現地調査」です。電話やメールだけで見積もりを出す業者もいますが、トラブルを避けるためには必ず現地を見てもらう必要があります。 プロの調査員は、主に以下の点を確認します。
- 搬入経路: 重量が80kg前後あるエコキュートのタンクを、設置場所まで運ぶ通路の幅や高さが確保できるか。
- 設置スペースと基礎: タンクとヒートポンプユニットを置くスペースがあるか。また、地面が土かコンクリートかによって、必要な基礎工事の内容が変わります。
- 電気設備状況: 分電盤の空き回路数、現在の契約アンペア数、引き込み線の太さなどを確認し、200V工事が可能か判断します。
- 配管ルート: お風呂(浴槽)までの距離や、既存のガス給湯器の配管位置を確認します。
- IH設置状況: 現在のガスコンロのサイズや、ガス管の閉栓位置などを確認します。
ステップ2:見積もりの提示と契約
現地調査の結果に基づき、正式な見積もりが提示されます。 ここで確認すべきは「総額」だけでなく、「工事の内訳」です。機器代金、電気工事費、水道工事費、基礎工事費、廃材処分費などが明確に記載されているかをチェックします。 内容に納得できれば契約となります。この時点で工事日を調整します。エコキュートとIHの同時工事は、通常1日で完了しますが、基礎コンクリートを新たに打設する必要がある場合は、事前の工事が必要になることもあります。
ステップ3:工事当日の流れ(朝9時〜夕方17時頃)
工事当日は、以下のような流れで進みます。
養生と搬入(午前中)
玄関や廊下、壁などを傷つけないよう保護シートで養生し、新しい機器を搬入します。同時に、既存のガス給湯器とガスコンロの撤去を行います。
基礎・配管・電気工事(日中)
- 屋外: エコキュートの設置、給水・給湯配管の接続、ヒートポンプ配管の接続、電源線の結線を行います。
- 屋内: 分電盤から200Vの専用線を配線します。キッチンではガス管を閉栓し、IHクッキングヒーターを設置して電源を接続します。
- 浴室: 浴槽の循環アダプター(お湯が出てくる金具)を交換します。
試運転とエア抜き(夕方)
全ての接続が完了したら、水漏れがないか、電気が正常に通っているかを確認します。タンクに水を張り、エア抜き作業とお湯はり試験を行います。
取り扱い説明と引き渡し(完了)
リモコンやIHの操作方法、日常のメンテナンス方法について説明を受け、工事完了確認書にサインをして終了です。
この間、一時的な停電(30分〜1時間程度)や断水が発生します。工事当日の夜からお風呂に入れるケースがほとんどですが、タンクにお湯が沸き上がるまで時間がかかるため、時間帯によってはシャワーのみとなる場合もあります。
3. 「失敗しない」ための業者選び・5つの鉄則

オール電化工事の成功の鍵は、機械(製品)選びよりも「業者選び」にあります。エコキュートやIH自体はパナソニックや三菱電機などの大手メーカー製ですが、それを設置するのは地元の施工業者だからです。 配管の接続不良による水漏れや、電気配線のミス、見栄えの悪い施工などを防ぐために、以下の5つの基準で業者を選定してください。
鉄則1:「オール電化専門」または「自社施工」の業者を選ぶ
リフォーム業界には、営業だけを行い、実際の工事は下請け業者に丸投げする「ブローカー型」の会社が多く存在します。 丸投げの場合、中間マージンが発生して費用が高くなるだけでなく、営業担当者と現場職人の連携が取れておらず、「話が違う」というトラブルが起きがちです。 選ぶべきは、自社に電気工事士や管工事施工管理技士などの資格を持った職人が在籍している「自社施工店」、あるいはオール電化工事に特化した「専門店」です。彼らは経験数が圧倒的に多く、イレギュラーな現場でも臨機応変に対応できる技術力を持っています。
鉄則2:保有資格を明示しているか確認する
エコキュートとIHの設置には、国家資格が必要です。無資格での工事は法律違反であり、火災や漏電事故の原因となります。 ホームページや会社案内で、以下の資格保有者が在籍しているか必ず確認してください。
- 第二種電気工事士(必須): 電気配線工事を行うために必要です。
- 給水装置工事主任技術者: 水道管の工事を適切に行うための資格です。
- 液化石油ガス設備士/ガス機器設置スペシャリスト: ガスの閉栓や機器撤去に必要な場合があります。 これらの資格を提示できない業者は、検討リストから外すべきです。
鉄則3:「工事保証」の内容と期間をチェックする
メーカー保証(本体の故障に対する保証)は通常1〜2年ですが、重要なのは施工業者が独自につける「工事保証」です。
これは、「配管から水漏れした」「配線ミスで動かなくなった」といった、施工ミスに起因するトラブルを保証するものです。
優良な業者は、自社の施工技術に自信を持っているため、5年〜10年の長期工事保証を無償で付けています。逆に「工事保証はありません」あるいは「1年だけです」という業者は、施工後の面倒を見る気がないか、技術に自信がない可能性があります。
また、口約束ではなく、必ず「保証書」を書面で発行してくれるかどうかも重要なチェックポイントです。
鉄則4:見積もりの「一式」表記には要注意
失敗事例で最も多いのが、追加費用の請求です。 見積書に「エコキュート・IH工事一式 〇〇万円」としか書かれていない場合、非常に危険です。契約後に「既存機器の処分費は別です」「電気配線の延長費用がかかります」「基礎工事費が入っていません」などと言われ、最終的な支払額が跳ね上がることがあります。 信頼できる業者の見積書は、以下のように細分化されています。
- 機器本体価格(型番明記)
- 標準工事費
- 電気配線工事費
- 既設機器撤去・処分費
- 諸経費(交通費など)
このように内訳が明確で、かつ「この見積もり以外に追加費用は発生しません」と明言してくれる業者を選びましょう。
鉄則5:施工事例(写真)を公開しているか
ホームページやSNSで、実際の施工事例を写真付きで公開している業者は信頼度が高いと言えます。 特に見るべきは、「配管の処理」と「配線の隠し方」です。
- 配管に保温材(カバー)がしっかり巻かれているか(テープが剥がれていないか)。
- エコキュートの足元がコンクリートでしっかり固定されているか。
- 外壁を這う配線がダクトで綺麗にカバーされているか。
施工事例は、その業者の「仕事の丁寧さ」を映す鏡です。写真が少ない、あるいはメーカーのカタログ画像ばかり使っている業者は、実績が乏しい可能性があります。
4. 価格の安さだけで選んではいけない「落とし穴」
業者選びにおいて、価格はもちろん重要ですが、「安すぎる」業者には必ず裏があります。よくある落とし穴について警告します。
「型落ち品」や「展示品」の可能性
他社より10万円以上安いような場合、設置される機器が数年前の「型落ちモデル」であったり、ショールームで使われていた「新古品(展示品)」であったりすることがあります。 契約前に必ず、設置される機器の「メーカー名」「正確な型番」「製造年」を確認してください。最新モデルだと思っていたら、省エネ性能の低い旧型だったというケースは少なくありません。
必要な部材を削る「手抜き工事」
安くするためには、見えない部分のコストを削るしかありません。 例えば、エコキュートの貯湯タンクを固定するアンカーボルトの本数を減らす、耐久性の低い安価な配管部材を使う、アース工事を省略する、といった手抜きが行われるリスクがあります。 これらは設置直後には分かりませんが、数年後に水漏れや故障、あるいは地震時の転倒といった形で牙を剥きます。「適正価格」を知り、極端な安値には警戒心を持つことが重要です。
5. アフターフォローと地域密着の重要性
エコキュートやIHは、毎日使うライフラインです。万が一お湯が出なくなったり、コンロが使えなくなったりした時、どれだけ早く対応してくれるかが生活の質を左右します。
「24時間365日受付」の実態
大手のリフォーム会社や家電量販店は、コールセンターを設置して24時間受付を謳っていることがあります。
しかし、受付は24時間でも、実際に修理担当者が手配されるのは「翌営業日以降」ということが多々あります。
一方、地域密着型の専門業者は、社長や担当者の携帯電話に直接繋がり、緊急時には「今から行きます」と駆けつけてくれるフットワークの軽さがあります。
真冬にお湯が出なくなった時、数日待たされるのと、当日に見に来てくれるのとでは、安心感に雲泥の差があります。業者を選ぶ際は、拠点が自宅から車で1時間以内にあるかどうかも目安にすると良いでしょう。
6. まとめ:納得のいく工事で快適なオール電化ライフを
エコキュートとIHの同時設置は、家計の節約、家事の時短、そして家族の安全に直結する、非常に意義のあるリフォームです。しかし、そのメリットを最大限に享受し、長く安心して使い続けるためには、最初の「入り口」である工事と業者選びが何よりも重要です。
最後に、失敗しないためのポイントを再確認します。
- 現地調査は必須: 現場を見ずに正確な見積もりは出せない。
- 同時工事は1日で完了: スケジュールを確保し、当日の流れを把握しておく。
- 資格と保証を確認: 電気・水道の資格と、長期の工事保証があるか。
- 内訳の見える見積もり: 「一式」表記を避け、追加費用の有無を確認する。
- 価格より信頼: 極端な安値に飛びつかず、実績と対応力で選ぶ。
「オール電化にして本当によかった」と心から思えるように、焦らず、じっくりと信頼できるパートナーを探してください。
複数の業者に相談し、説明の丁寧さや担当者の人柄を比較することが、成功への一番の近道です。今こそ、賢い選択で、未来の快適な暮らしを手に入れましょう。

